お客様は98歳のはなし


去年はSARSやらイラク戦争やらで、3月以降は大型客船が広島に入る事はなかった。今年こそ何事もなく、たくさんのお客様がいらっしゃいますように、というのはガイドの心からの願いである。


今年は早々と2月に豪華客船が入港した。寒い盛りではと心配していたが、杞憂に終わる。風ひとつない穏やかな1日。いつもは大型バスで大人数を相手にガイドをするのだが、今回はおふたり。何と98歳の男性とそのお連れの女性。

お客様が頑固だったらどうしよう、相性が悪かったら…と不安がなくもない。なかなか好みを掴みきれないままでの長時間ガイドは正直しんどい。でも、こちらはプロ。話題をとっかえひっかえ小出しにしながら、それをどうにかしなければいけないのだ。

98歳のH氏はとってもお元気で、穏やかなステキな方だった。かつてはビジネスで世界を飛び回り、日本の経済界の重鎮とも親交があったそう。でも、"All've gone". (みんな逝っちゃったよ)とのこと。さもありなん。

岡山後楽園で咲き始めの梅の香を楽しみ、倉敷の美観地区を散策。車椅子が必要かもしれないと、いつでも用意できるようにしていたが、まったく必要なし。しっかり歩かれた。98歳でも元気であれば十分に長旅も楽しめるのだと納得。

独断と偏見で言わせてもらえば、世の男性方、特に元○○の肩書きをもつ熟年者には、頑固でアンタが大将で、空気が読めない人が多い。しかし、このH氏、威張りも虚勢も何にもない。超自然体なのだ。年齢がそうさせるのだろうか。

同伴のN女史はロサンゼルスの元TVプロデューサー。小柄でスリム、昔はさぞ美しかったであろう事が容易に想像できる。最近読んだ小説Danielle Steel著 'WEDDING' の主人公のママがたまたまTVプロデューサーで、こんな華やかな世界もあるんだなと感心しきりだったので、その話題を持ち出すと会話がおおいに盛り上がる。何でも読んでおくものだ。

9時間という長いツアーだったが本当に楽しく過ごす事ができた。いろんな事を聞い話して、早春の梅を愛で、おいしいランチをいただいて、こんないい仕事は他にない。
お別れの時、次回もぜひあなたにガイドをお願いしたいとおっしゃっていただいた。一番うれしい言葉である。2年たつと「お客様は100歳」になる。ワクワクだ。



何だか、こいつは春から縁起がいいわい!