大きな忘れ物
この日のお客様は17名―イングランド、スコットランド、アイルランド、フランス、スイス、オーストラリア、インド、アメリカデンバー。

いつもの慣れ親しんだコース、宮島と平和公園。朝方までの激しい雨も上がり、風は強いが問題なし。新緑が美しい。

ベジタリアンだというインド人のグループをお好み焼き屋へ案内し、かつおの粉も豚肉も抜いてねとお願いする。後でとてもおいしかったと感謝される。こういうことは日常茶飯。

反応のいいアメリカ人がいないためか、話が面白くないせいか、イマイチ笑いは少ないが気にせず参ろう。

自由時間を利用してできるだけ多くのお客さんと会話し、いろんな国の話を聞く。リラックスした雰囲気で、初対面である事を忘れるくらいに親しくなれたらいいなと思っている。これもいつもの事。

デンバーに住むアジア系のオバチャンは7ヶ国語を操る。フランスの女性とずっと話していた。とっても明るく楽しい人だ。どこか憎めないところがある。広島に住む友達の所に滞在しているらしい。
「ひとりで帰れますか?」
「帰れんよ。」
「じゃあ友達が迎えに来るの?」
「多分ね。わからん。」
「ホテルで待ってた方がいいですね。」

途中何人かを別のホテルに降ろして、いよいよ広島駅に到着。到着場所は出発と同じホテルグランヴィア、駅の隣だ。「さあ、みなさん。駅に着きました。忘れ物のないように。」と言いながらホテルに誘導。9人は駅のホームまで一緒に行ってお見送り。1人がホテルでさようなら。

ロビーで人数を確認するが、ひとり足りない。何度数えても足りない。まわりを見渡してもオバチャンの姿が見えない。みんなに「あの7ヶ国語のladyは?」と尋ねると、「bus」という返事。

「バ、バスー?」あわてて走って外へ出ると、信号待ちをしていたバスからオバチャンが降りてくるのが見える。ああ、よかった。運転手さんありがとう。あのまま気付かなかったら、お客さんがバス会社の車庫に行ってしまうところだったよ〜。冷や汗。

「広島駅とホテルは別のところだと思っていたの。」ちっちゃいオバチャンが恥かしそうに話している。いえいえ、悪いのは私です。言葉不足と怠慢。

いつもならお客さんが降りた後、車に戻って忘れ物がないかどうか確かめるのだけれど、この日は「まっ、いいか」で済ませてしまったのだ。慣れがこういうミスを生む。大きな忘れ物を見落としてしまった。気を引き締めて仕事をしなければ。

それでは一句
   慣れが呼ぶ 手抜き横着 客忘れ